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更新日:2014.3.2

主宰 下館和巳

 

 11年暮らした東京から仙台に戻ってきた年の冬、窓の外に雪が降りはじめるのが見えた。私は仕事をする手を止めて、しばらくじっと雪の降るのを見つめていた。どんどん雪が濃くなっていく。なんだか切なくなった。なぜ切ないのだろう?そのことがすごく気になり始めた。この降りしきる雪の向こうに、私がずっと求めてきたなにかがあると思えてならなかった。

 私は塩釜に生まれ、塩釜から仙台の中学校と高校に通い、東京の大学に行き、イギリスに留学し、しばらく東京で生活していた。ある日、自分は将来どこでどうやって生きていくのだろうか?と思った時に、夢を見た。私は、東北の北のどこかの高校で英語を教えている。外は雪国。もう一つ、青葉の繁る田舎道を、トラックに乗って走っている。積まれている荷物は大道具、衣装・・・。あれは明らかに劇団。不思議な白日夢だった。

 雪の向こうに切なさを感じたのは、燃えるような、激しい、そして美しいものを追いかけていたい自分の姿が見えたからかもしれない。淋しく、熱く、悲しく、ドキドキするもの、それが降る雪とその向こうにある。いつもある。

 ふと、木下順二の朋友、宇野重吉が愛していた山頭火の一句を思い出した。

 

          分け入っても分け入っても青い山