下館和巳のイギリス日記




Vol.7      ―イラク戦争について思うこと―  シェイクスピアの誕生日を記念しての六部作 その1 

 イギリスの田舎は美しい。いや、田舎だけではない、イギリスのどんな街も美しい。 美しいと感じるのは、お菓子のような家々や庭、羊や牛や馬が草をはむ丘陵地帯、教会やパブ、 ありとあらゆるところから、ここに住んでいる人たちの人間味とやさしさが感じられるからだ。

 3/20ついに英米のイラク攻撃が始まった。テレビに映し出されるブレアー首相の顔は、この穏 やかな国の人間のものとは到底思えなかった。その日、昼食を共にしたケンブリッジ大学の学生で 俳優志願のジョット君は、イラクに兵士として行っている親友のことをしきりに案じていた。その 同じ日の午後、長女が通っている小学校の同級生のお父さんと立ち話をしていると、弟が海軍でイ ラクにいると顔を曇らせていた。

 45000人のイギリス人が軍人として参戦している。だから、ここで戦争はテレビの中の遠くの 話では決してない。家庭の扉の外まで戦争の足音が聞こえているのだ。

 4/10 戦争終結の報道が新聞の一面を埋める。しかし、本当に終ったのだろうか? 数多くのイラク 国民の、兵士の、ジャーナリストの尊い命が奪われ、傷つけられたことを知る。フセインはこうい う結果になることを百も承知で祖国を戦場にしたのか? 結局、攻撃の動機であったはずの核兵器や 化学兵器は見つからなかったじゃないか? ・・・という疑問が沸いた。開戦前のイギリスにあった 反戦の動きは、十分に予期された英米のあっけない勝利によってよりも、フセイン体制の崩壊に歓 喜するイラク国民の姿によって、あたかも戦争が正当化されたかのように思われて、屈折を見た。

 何だか、やりきれない気持ちになった。  





* 4月23日、シェイクスピアの誕生日に寄せて、主宰下館は、6編の文章を書き上げました。
  その鮮度が失われないうちに、これから毎週木曜日にひとつずつ、日記を更新します。
  どうぞお楽しみに。