下館和巳のイギリス日記




Vol.4   2002.11.18

グローブ座戦争から命からがら帰ってきて、二ヶ月たった。
私はまるで魂をぬかれた傷痍軍人のような気持ちでいる。
こんな時は、ダンテのことを考えているといい。
そして、ラーメンのスープを作っているといい。
だから、
きのう、本当にひさしぶりにラーメンを作って、
ケンブリッジに住む十年来の友人達に食べてもらった。そしたら、
自分の作るラーメンを無理やりラーメンと呼んでもらわなくてもいいのじゃないかな
と、ぽつんと思っていた。
ながほ日記を読んでから、一回にこしらえるラーメンは
五杯までと決めたので、すごぶる評判がよかった。
ラーメンのスープを三日ほど゜かけて無心に作っている時に、いつもいろんな
ことが浮かぶ。スープが透明になってくると、
頭も胸の辺りも妙に透明になってくるから不思議だ。


さっき、テレビでモンティパイソンの番組を見ていた。
なんとなつかしいことか。1969年から1974年ごろだから、
僕は高校生で、シャーロック・ホームズにのめりこんでいた頃だった。


   always look on the bright side of life


という一節が明るく、知的に、そして頓馬に歌われていたっけ。
わけのわからない感じがよかった。ミスター・ビーンよりもはるか前に、イギリス人
のなんとも形容しがたいおかしさをおちゃめさを、彼らは滲み出していた。


昼下がり、ダンテの教授、ロビン・カークパトリック博士とパブに行く。
ロビンは、モンティ・パイソンのお兄さん達と同時代のおじさんかもしれない。
オックスフォードで勉強したというから、友達かもね。ロビンは、学生時代
シェイクスピアに夢中だったというからおもしろい、僕はシェイクスピアから少し離 れたい
と思って、ロビンと会うのに、会えば゜彼は、シェイクスピアの話ばっかりしたがる のだ、
僕はダンテの話を聞きたいのに。
ハムレットはカットするのか、と聞いてくる。長すぎるから仕方がない、カットはす る、という
と、するな、という。そんな問答をビールを飲みながら延々と三時間もやっていた。


 でも、こんな感じが大事なのかもしれない。