下館和巳のイギリス日記




Vol.19   2003.8.15

     家族で水上生活者となる

 妻が、十年前にケンブリッジで出会った冒険家のパッ クストン夫妻の大いなる影響を受けて、どうしてもイギリ ス滞在中に経験したいことがあるというので、やってみる ことになった。

 マンモスの発掘調査への参加、アザラシとの昼寝、幌 馬車で田舎を走る・・・と、選択肢はいろいろあったが、 結局、テムズ運河を旅することになった。

 僕は、最初、水面に浮かびつつワインを飲む優雅な旅 を想像していたが、テムズ運河の平底細船に乗るイギリス 人には、運河に忽然と現れたアジア人の水上生活者としか 思えなかったろう。

 僕は、30分ごとに訪れる水門の開閉と絶え間ないボー トの操作に四苦八苦し、5歳の長女は小猿のように走り回 り、2歳の次女はハナをたらして泣き、妻は炊事に忙しい という感じだったからだ。

 だが、途中で出会ったロンドンの下町の叔父さんや、 停泊させてもらった川辺のパブの人たちの人情に触れる ことができた。運河から見るイギリスも何とも味わいが あったが、何より感動したのは、家族四人で見上げた 真夏の夜の満天の星空だった。