10月10日 稽古日誌番外編 古川学園

古川学園中学校

 

午後の一コマを使っての演技指導。

古川学園中学校では近日に迫っているイベントでの演劇披露の為、短縮版での上演を準備中。

その時間、なんと20分。

シェイクスピア・カンパニーの『松島湾の夏の夜の夢』が20分とは驚きである。

この日までに下館先生が大まかな演出を付けていたというので確認。

初めての演劇という人も少なくないであろう面々で、緊張と照れもあってか進捗が芳しくないことがよく分かる。

しかしながら、 希望というのはどこにでもあるもので、全体としては今ひとつ膜に覆われていながら個人として

は輝いている生徒がいくらかいる。

一つの作品をつくるということは試行錯誤の連続であって、当然ながら全体を牽引する生徒にもミスはある。

例えば台詞の言い間違いなどだ。

こうしたミスが出るとどっと笑いが起こる。

だが、彼らはそれに耐えつつ演技を続ける。

多くの生徒はこの笑いの対象になるのが嫌で挑戦出来ない嫌いがあるが、牽引する彼らが挑戦を繰り返すうちに、

笑いの対象となりたくないという思いを、自分は挑戦出来ていないという焦燥が上回る。

こうして稽古場と化した一コマは心地良い緊張感に到達するわけだが、ここまで持ってくるのに時間を要する。

一時間に満たない時間の中で芝居をつくってゆく難しさを痛感する。

時間的制限がある為、一通り通しを確認した後は徹底的に出ハケを確認する。

決めたであろう出ハケがうろ覚えであったり、実は合理的でなかったりという箇所が散見され、どうやら全体で

の練習も出来ておらず曖昧な部分が多い為、頭から最後までの出ハケを確認、決定する。

そうこうしているうちに無情にも授業終了を知らせる鐘が鳴る。

シェイクスピア・カンパニーでも中々ないであろう超特急での確認、果たして生徒たちはどれほど付いて来られ

たであろうか。

終了後に確認の為に声をかけてくれた生徒もおり、そうした所に一生懸命さが窺える。

多くの生徒は台詞を早く覚える一生懸命さに恥ずかしさ、かっこ悪さを感じるようだという話を聞いたが、形は

違えど皆一生懸命であることに安堵する。

美輪明宏は出ハケや動線の確認を交通整理と呼んで稽古の早期段階で行うそうだが、限られた時間の中で一つの

作品をつくるということは、つくり手側も時間感覚を持って集中して稽古に臨むことが求められると改めて思っ

た。

次回以降の稽古で具体的な演習に入れること、生徒みんなが膜を突き破って輝いてくれることを信じて期待する。