頑張れ! 茂木栄五郎・清宮幸太郎

 更新日時 2017年12月20日

作家 丸山修身

 

先日僕は、地元の小金井市役所に電話を入れた。目的は、プロ野球「東北楽天ゴールデンイーグルス」の茂木栄五郎選手を囲む会が、今年も小金井市で開催されるかどうか確認したかったのだ。茂木選手は小金井市立第四小学校、南中学校卒、珍しい小金井市出身のプロ野球選手なのだ。

昨年末12月26日、茂木選手を招いて市のホールで「報告会」が開かれた。残念なことに僕はこの催しを知らず、参加することが出来なかった。会は西岡市長も参加して大いに盛り上がったようであるが、茂木選手を囲んで野球の四方山話で楽しみ、市をあげて茂木選手を励ますという趣旨だったようだ。

これも後で知ったのだが、定員150人、参加は申し込み順ということで、来年こそは出るぞ、と思い定めていたのだった。僕は野球少年だったので、無性に血が騒ぐのである。

 

それに対する市役所の返答は、残念ながら今年は茂木選手を囲む報告会は予定していない、とのことだった。去年は新人ということもあって、特別に企画したようだ。それでも僕は茂木選手を応援する。それというのも地元の評判がとてもいいのだ。

僕の知り合いの女性の一人は、息子さんが茂木選手と小学校中学校で同学年だったそうだが、「茂木くん、性格がとってもいいんですよ」と語っていた。

それになんといっても楽天球団はシェイクスピア・カンパニーが拠点をおく仙台のチームなのだ。応援しなければバチがあたる。僕は仙台を第二のふるさとと感じているのである。

 

今年の楽天は、出だしは快調であった。首位をひた走り、優勝も夢ではないとさえ思った。この躍進には茂木選手の活躍が大いに寄与していた。小柄な一番バッターでありながらホームランを多く放ち、打率も高く、まるで核弾頭みたいであった。それが、おそらくケガのせいだろう、次第に成績も落ちていった。試合後半に交代することがたびたびあり、休むことも多くなった。

梨田監督は、「疲労がたまっているから」とその理由を述べていたが、これはおかしい、と僕はすぐ気づいた。入団二年目の若手が、シーズンが始まって間もないのに、「疲れた」もなにもないものだ。六月には打撃中に右肘を傷めたとのことで、決まっていたオールスター出場も辞退した。

肘はそれ以前から悪かったに違いないのだ。

 

それでも残した成績は立派なものである。出場試合数103(去年は117)打率「296」(278)、打点47(40)、ホームラン17(7)。特に打率は首位打者西武・秋山、ソフトバンク・柳田という日本を代表する打者に続いて堂々の第三位であった。

しかし僕は満足していない。もっともっと出来るはずだからだ。ケガさえなければ、という思いがあるのだ。

僕は今年2月14日の『つれづれ日記』でおよそ次のようなことを書いた。

 

    「茂木選手は二,三年後にはおそらくホームラン20~30本、打率 3割、打点は80をこえて楽天の中心選手となるだろう」

 

およそ一年たった今、僕は更に高みを望んでいる。それは「打率3割2分、ホームラン30本、打点100」である。これは二,三年の内、出来れば来年に達成してもらいたい。ケガさえなければ可能だ、と僕は茂木選手の能力を信じている。身長171センチの体でこれを達成できれば、野球史に名が残るだろう。

茂木選手の打撃の特徴は、バットを思い切って振ることである。ケガは右肘の遊離軟骨というものだそうだ。要するに右肘の軟骨が欠け、手術でそれを取り除いたのだろう。肘は来シーズンには間に合うそうである。これからもケガを怖れずにバットをふってもらいたい。

ショートの守備は上手とはいえないが、これも肘が痛いのが幾分か影響しているだろう。治った来シーズンは、目の醒めるようなプレーをみせてもらいたい。そして日本代表として、「サムライジャパン」の日の丸のユニフォームを着た姿を見たいものだ。順調にいけば、きっとそうなるだろう。

 

茂木選手の他に、僕は早稲田実業から日本ハムに進んだ清宮幸太郎選手にも期待している。早稲田実業はすぐ隣の国分寺市にあり、僕のところから自転車で20分ぐらいである。散歩にちょうどいいので僕はドラフト会議の翌日ぶらぶらと行ってみたが、正門前で30人ほどの報道陣が脚立をもって待ち構えていた。後でニュースを見たが、栗山監督が指名の挨拶に高校を訪れるのをねらっていたようだ。

それにしてもこの高校は超人気選手を生む学校である。遠く王貞治に始まって、荒木大輔(元ヤクルト)、斎藤佑樹(日本ハム)、そして清宮である。

清宮は日本ハムに入って良かったと思う。パリーグがセリーグと違っていいところは、新人でもどんどん使うことだ。その結果として選手が育っていく。パリーグの方が力が上なのは、この積極策が大いに関係していると僕は考えている。何事においても、新人はつかわなければ育たないものだ。

楽天ではオコエが思い切って起用され、またそれによく応えている。慢心さえなければ、二,三年後にはレギュラー、更に中心選手となるだろう。

栗山監督は清宮をどんどん使うだろう。最初はおそらく打てないに違いない。一年目で、ホームラン10本、打率2割3分、打点40ぐらいの成績を残せば、よくやったといえるのではないか。独特のベビーフェイスであるから、人気はすごいだろう。

巨人など、何人の有望選手を宝の持ち腐れにして、成長の芽をつんだことか。ちょっと成績が上がらないとすぐ引っ込めて使わないのが、巨人の悪しき流儀である。例えば今年9年目で日本ハムに移った大田泰示。そして2014年に奈良智弁学園から期待されてドラフト一位で入団した岡本和真。岡本など、来年あたり出てこないと消えていくだろう。

 

あっ、楽天といえばもう一人忘れていた。それは、慶応大学からドラフト二位で入団した岩見雅紀選手である。彼は、高橋由伸の23本、田淵幸一の22本に次いで、21本の東京六大学史上歴代三位のホームランを記録した。体は大きくたくましく、顔はゴリラにそっくりで、いかにも力がありそうだ。

果たして岩見は活躍するか。彼は大学の後輩なので思い切って言うが、僕は無理だと思う。動きが鈍重なのだ。当たれば大きいが、おそらくプロのスピードについていけないだろう。おそらく「大型扇風機」になるのではないか。

僕は実際に岩見の試合を四,五回神宮球場で見ているが、打ったのを見たことがない。チャンスに弱そうである。心の内で、何度、このバカ!このバカ!と叫んだことか。一度だけ、バットの真っ芯に当たったのだろう、明治のピッチャーの左肩にすごいライナーをぶち当てたことはあるが、めぼしい当たりはそれだけだ。

どうして楽天はこんな穴の多い選手を取ったか。思うに、楽天の弱点は日本人の長距離打者不足、よほど和製大砲がほしかったのだろう。しかし僕の予想が外れて、岩見選手が活躍してくれれば、これはもちろんうれしいことである。

 

最後にもう一度。頑張れ、茂木栄五郎! 清宮幸太郎! そして、岩見雅紀選手も頑張れ!