丸山修身のつれづれ日記

シェイクスピア・カンパニー脚本構想でも御協力いただいている作家 丸山修身(まるやまおさみ)さんの月刊コラムです。(バックナンバーはこちら



本コラムが本になりました!

『青草の道』(鳥影社、2016年4月5日発刊)

 

本書は、これまでのコラムに手を加えて一冊の本にまとめたものです。

「ふるさと茫茫」「びっくりすること」「歴史のほとりにて」「いじらしき日々」「文学と演劇の言葉」の5章から構成されています。

著者曰く、「僕個人の体験を語りながらの一つの時代史と思っていただいてよい。田舎での幼い頃の暮らしと比べると、現在、東京で別世界を生きているかの感があるのである。それほど変化の激しい時代であった。団塊の世代の一人としてそれを記録しておくことは大きな意味があると考えた」とのこと。

ぜひお読みください。(アマゾンのページで詳細を見る


頑張れ 栄五郎!

更新日時 2020年7月3日 

作家 丸山修身
  

 6月19日(金)、ほぼ三ヶ月後れでプロ野球が開幕した。「球春」という言葉がある通り、やはり野球がないと一年が始まった気がしない。3月の選抜高校野球(春の甲子園大会)から始まり、春は野球とともにやってくるという意識が子供の頃からずっと刷り込まれているのである。これはみなさんもそうではないだろうか。スポーツにはそれぞれ季節があり、例えばラグビーだったら寒い冬というように、意識にふかく馴染んだものがある。

 

 うれしいことがある。今年はパリーグでは楽天が優勝候補だという。ラジオを聴いていたら、開幕前、どの評論家もゴールデンイーグルスのAクラス入りを予想していた。補強がうまくいったのと、若手が伸びてきたからだろう。

 僕がいま応援しているチームは楽天なのだ。その理由は先ず第一に、シェイクスピア・カンパニーが活動の拠点にしている仙台のチームだからである。我がチーム、という意識があり、応援したくなるのは人情というものだろう。

 それともう一つの理由は、以前も書いたことがあるが、新キャプテン・茂木栄五郎選手が、僕の住む小金井市の出身だからである。小金井はどちらかといえば緑ゆたかな文教都市であって、一流のプロ野球選手が出るのはとても珍しい。昔ヤクルトの二軍に一人いたようだが、マスコミで名を聞くことはまったくなく消えてしまった。

 

 僕は茂木選手の楽天入りが決まった時、うれしくて思わず彼が卒業した小中学校を見にいったものだ。市立第四小学校、市立南中学校で、僕が住む近くである。何の変哲もないグラウンドだったが、ここで栄五郎少年がボールを追いかけたりバットを振ったりしていたのだと思うと、感無量であった。もっとも彼が本格的に野球に打ち込んだのは、隣の府中市のチームに加わってかららしいが。

 中学時代、すでに評判の選手だったのだろう。高校は神奈川県の名門・桐蔭学園に進み、さらに大学は早稲田大学、一年からレギュラーとして活躍している。僕はこの頃から茂木選手を神宮球場で見ていたが、小金井出身とは当時は知らなかった。小粒だったが長打力もあるとてもよい選手であった。

 僕が住む近辺には、小中学校時代の茂木栄五郎少年を知る者も多く、その性格の良さを耳にするのもとてもうれしいことである。野球エリートとしての驕ぶった噂はまったく聞かない。だからキャプテンにも選ばれたのだろう。大体性格の悪い人間は、どんなスポーツでも大成しないものだ。

 

 その茂木選手、現在は小金井市の観光大使である。そして小金井市のホームページで、このコロナ渦にあって、オリンピック女子マラソン代表の鈴木亜由子選手(日本郵政・小金井郵便局勤務。女子陸上部の寮が小金井市内にある)とともに、市民に励ましの動画を発信している。みなさんも見ていただきたい。

 それにしても、栄五郎、とはなんと強そうな名前だろう。最近のキラキラ名前と違い、中身がびっしりと詰まった、江戸末期か明治の侠客、豪傑の印象だ。清水次郎長か近藤勇の弟子にしても不思議ではない。しびれるほど好きな名前である。

 それにしても彼、ここ何年かケガばかりしていた。体が大きくないから、何事も全力プレーなのだろう。しかし今年はうまく滑り出したようである。ケガさえしなければ、絶対好成績を残す選手なのだ。茂木新キャプテンの下で日本一となったらどんなにうれしいことだろう。小金井市でちょうちん行列をやりたいぐらいだ。

 今年は監督が三木というのも期待する理由だ。元スター選手と違って名前で選ばれたのではない。能力で選ばれたのだろう。大体僕は監督が選手よりも注目されるような野球は好きではない。主役はあくまでも選手、その素晴らしいプレーを見たい。それが真の野球ファンではないだろうか。今年は試合数が少ないから、三木監督の采配の下、うまく波にのれば楽天のパリーグ制覇は十分にあり得ると思っている。

 あれ、今年の日本シリーズはどうなるんだろう。やらないのかな。それとも予定がまだ決まっていないのかな。クライマックスシリーズはパリーグのみやるようだ。とすると、やはり日本シリーズはやるんだろうな。これは是非やってもらいたい。やらなければ気のぬけたビールと同じ、シーズンの意味がない。

 

 野球といえば去年から今年にかけて、野球史に永遠に名をとどめる大選手が相次いで亡くなった。金田正一(死亡日2019年10月6日)と野村克也(死亡日2020年2月11日)である。かれらは傑出した選手であったとともに、存在感も抜群であった。ON(オーエヌ)とともに、時代を象徴していたのだ。

 人は誰でもスポーツ選手や歌手を通して自分の生きてきた時代を回顧する。スポーツとか歌は、まさに時代とともにある。その貧しかった時代が濃密に詰まっているために、彼らの話は抜群に面白かった。

 特に野村の人生は、父親の戦死に始まる。京都丹後地方での少年時代の貧困から、テスト生、そしてスター選手にのし上がっていく行程は、まさに戦後そのものだった。野村の一生に重ねて我が人生を振り返った人は多かった筈である。

 その本格的な回顧番組が、コロナ禍のために放送されなかったのは残念であった。いずれコロナが収まったら、特集のようなかたちで組んでほしいものだ。何度みても野村の人生は波瀾万丈で感動を与える。また長く球界の一線で活躍したため、様々な選手、野球界の裏話もとても興味深いものだ。いわば野球史の宝庫である。

 

 六月が終了した時点で楽天は好調だ。七勝三敗でロッテに次いで二位につけ、茂木選手も三割を打っている。

 それから、前回の『つれづれ日記』で書いた「明治の光源氏」こと広島のドラフト一位・森下暢仁(まさと)投手も順調に一勝を挙げた。テレビで彼のイケメンぶりをごらんになった方も多いことだろう。初登板の前回は七回まで素晴らしいピッチングで0封していたが、抑えの外人投手が9回にあっけなく打たれて逆転され、勝利が逃げていった。森下くんにはまったく気の毒なことであった。  

 僕はテレビを見ていて広島ベンチの無能にも腹がたち、思わず「このバカ!」「このバカ!」と叫んでいた。しかしこのようなことは必ず起こりうること、森下くんはめげずに頑張ってもらいたい。真に実力があれば乗り越えていくものである。そしてくれぐれも「カープ女子」には注意ですよ。

 ともあれ自粛が解除され、社会がにぎやかになって、幾分か気分が明るくなった。コロナの真っ只中では気持ちもふさぎ、『つれづれ日記』を書く気力もなかなか湧かなかった。それがこのように更新が遅れた理由である。どうかお許しを。

 

 茂木も森下も、金田や野村とまではいかなくても、観客の胸に深く印象を刻む選手になってもらいたい。頑張れ 栄五郎 暢仁!